乳房再建術後の 経過とケア

手術の方法と種類

乳房インプラントに関連する発がんの可能性について

近年、インプラントによる乳房再建術後に乳がんとは異なる2種類のがんを発症する可能性があることが分かってきました。以下にその2種類のがんについて説明しますが、まずは、ぜひとも心に留めておいていただきたい大事なメッセージをお伝えします。

乳房インプラントが入っている間は、生涯にわたり定期的なフォローアップを忘れずに受けましょう

では、それぞれについて説明していきます。

乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)

「乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫」は、T細胞性リンパ腫(悪性リンパ腫のうち、非ホジキンリンパ腫に分類される)の1つで、乳房インプラント周囲に形成される被膜組織から発生します。現在のところ、はっきりした原因は確認されていません。

  • 発症リスクはインプラントの種類によって異なります。表面がザラザラしたタイプ(テクスチャードタイプ)では、約2,200~86,000人に1人(2022年9月現在)です。日本でのBIA-ALCLの発症報告は2022年2月現在4例です。
  • 2022年9月現在、発症報告は全てインプラントの表面がザラザラしたタイプですが、ツルツルしたタイプ(スムーズタイプ)でも発症する可能性は否定できません。2019年8月以降に使用しているザラザラしたインプラントでは、2019年7月以前のザラザラしたタイプ(約2,200~3,300人に1人)に比べてBIA-ALCLの発症リスクが低いと考えられています。このように乳房インプラントにはBIA-ALCLの発症リスクがあるので、インプラントによる再建を選択する場合には担当医(形成外科医)とよく相談してください。
  • 疑うべき症状は、遅発性漿液腫(ちはつせいしょうえきしゅ)(インプラント周辺に体液が貯留する)、しこりが触れる、痛み、腫脹、再建乳房の形態の変化、被膜拘縮、潰瘍などです。このような症状に気付いた場合は、すぐに受診してください。
  • 診断には、超音波検査、MRI、CTなどの画像検査、穿刺(貯留液の検査)、組織検査(被膜の検査)などの検査を行います。
  • 見つかった患者さんでは、インプラントを挿入してから診断まで、平均7~9年でした。
  • 初期であれば、インプラントの抜去と被膜の完全切除の治療で治癒が期待できます。
  • 病状が進行すると抗がん剤治療や放射線治療が必要となり、進行度に合わせて治癒が難しくなります。

乳房インプラント関連扁平上皮がん(BIA-SCC)

2022年9月に日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会から「乳房インプラント関連扁平上皮がん」について発表がありました。BIA-ALCLと同様に、乳房インプラント周囲に形成される被膜組織から発生すると考えられていますが、はっきりとした原因などは分かっていません。

  • 2022年9月現在、日本では発症報告がありません。世界では、16例の発症報告があります。
  • インプラントの表面の違いによる発症リスクの違いはなく、ツルツルでもザラザラでも発症する可能性があると報告されています。
  • 疑うべき症状は、遅発性漿液腫(インプラント周辺に体液が貯留する)、しこりが触れる、痛み、腫脹、再建乳房の形態の変化、被膜拘縮などです。このような症状に気付いた場合は、すぐに受診してください。
  • 診断には、超音波検査、MRI、PET-CTなどの画像検査を行います。
  • 見つかった患者さんでは、インプラントを挿入してから発症まで、平均20年(10~40年)でした。
  • 今のところ有効な治療はインプラント周囲の被膜の完全な切除のみですが、発症6ヵ月後の死亡率は43.8%(2022年10月現在)と報告されており、治療成績はよくありません。