乳房再建術後の 経過とケア

術後の経過と日常生活

乳房インプラント

乳房インプラントは、ティッシュ・エキスパンダーと同様、大胸筋(だいきょうきん)の下に挿入します(ティッシュ・エキスパンダーを参照)。乳房インプラントは長年入れておくことができますが、年齢を重ねてくと手術していない側の乳房はバストトップの位置や大きさが変化する可能性があるのに対し、乳房インプラントは変化しないので、左右のバランスが崩れてしまう場合があります。また、乳房インプラントは長期間の使用に耐えるようになっていますが、劣化により10年から20年の経過で破損することがあります。なお、インプラントの内部は弾力性のあるシリコンでできているので、破損してもすぐには変形せず、ゆっくりと変形します。その場合は、乳房インプラントの入れ替えが必要となります。また、慢性的な圧迫を加えていると、乳房インプラントと挟まれている皮膚がダメージを受ける場合があるので、慢性的な圧迫は避けて下さい。

では、乳房インプラントの術後の経過とケアをわかりやすくするために、まず、変形や痛みなどの合併症の原因になる被膜と被膜拘縮について説明をします。

被膜と被膜拘縮

乳房インプラントは人体にとっては異物です。正常な生体反応として、人体は異物に接している筋肉や脂肪などの組織を守るために、異物を閉じ込めようとして膜を作ります。この膜が「被膜」です。

「被膜」は誰にでも起こる現象で、乳房インプラントの位置を固定する役割があります。一方で、個人差がありますが時間の経過とともに被膜は、異物をコンパクトにしっかり閉じ込めようとするために、少しずつ厚くなり縮もうとする現象が起こることがあります。この現象を「被膜拘縮」と言います。被膜拘縮が起こると中に入っている乳房インプラントが圧迫されるので、乳房が変形したり、胸が痛んだりする場合があります。

また、被膜拘縮が起こり、乳房インプラントが縮んだ場合、その上の伸ばされていた皮膚はその縮みに対応できなくて、皮膚にはたるみが生じます。そのたるみが「波打ち」のように見える現象を「リップリング(皮膚の波打ち)」と言い、外見上に問題が生じます。

■被膜拘縮予防のための対策

被膜拘縮予防対策について説明します。ポイントは2つあります。

では、それぞれについて説明します。

ティッシュ・エキスパンダー、乳房インプラントの表面

ティッシュ・エキスパンダーと乳房インプラントの表面は、細かいデコボコがあり、ザラザラしています(写真1)。

(写真1) ティッシュ・エキスパンダーと乳房インプラントの表面

ティッシュ・エキスパンダー
乳房インプラント

被膜の表面は、ティッシュ・エキスパンダーや乳房インプラントの表面の写しになりますので、ザラザラの表面に対しては、被膜の表面はザラザラに、ツルツルの表面に対しては被膜の表面はツルツルになります。縮む性質は、直線の方が縮みやすいので、ツルツルの表面は拘縮をしやすいと言えます。また、ツルツルした面で縮むと直ぐにわかりますが、元々デコボコしたザラザラ面では少し縮んでもわかりにくいということがあります。そのため、このザラザラ面を守る必要があります。実際に表面がザラザラしたティッシュ・エキスパンダーや乳房インプラントを使用できるようになってからは被膜拘縮による合併症が減りました。

被膜拘縮とドレーンの関係

ドレーンは、手術直後から2週間で説明したように、皮下に溜まってくる血液や浸出液を外に誘導する役目があります。ティッシュ・エキスパンダーや乳房インプラントの周りに血液や浸出液が溜まると、ツルツルの層ができて、被膜もツルツルしたものになります。「ツルツルした表面は縮みやすい」と書きました。将来の被膜拘縮予防のため、被膜ができるまでの間はなるべく乳房シリコンと自分の組織を密着させておきたいので、ドレーンの役割は重要です。ですから、ドレーンが入っている時から「バンドでしっかり押さえましょう」、「激しい動きはやめましょう」ということになります。

ティッシュ・エキスパンダーも異物なので被膜はできますが、拡張している間は被膜は固定されません。そのため、ティッシュ・エキスパンダーは動く可能性があるのです。

では、乳房インプラントの術後の経過とケアについて説明していきます。