がんの骨への転移と
日常生活

がんの骨への転移について

内臓など骨以外の所にできたがんの細胞が、血液の流れにのって骨に到達し、そこで増殖することを「骨転移(こつてんい)」と言います。「がんの転移」と言われると、多くの患者さんやご家族が「末期状態である」、「もうあまり生きていられない」と考えてしまうかもしれませんが、「骨転移(こつてんい)」は直接「余命」には影響しません。しかしながら放置しておいて良いものではありません。なぜならがんが骨に転移をすると、痛みが出現したり、骨折が起こったりするため、患者さんの生活の質(Quality of life:QOL)を低下させる大きな要因になるからです。また骨が壊され、骨に蓄えられていた栄養をがんが吸収すると、がんが活性化してしまうことも問題になります。

骨転移(こつてんい)は全身のどの骨にも発生します。一般的に骨転移を起こしやすいがんの種類は、肺がん、乳がん、胃がん、前立腺がん、腎がん、大腸がん(結腸がん・直腸がん)などです。そして、痛みや骨折、下半身麻痺などの困った症状を起こしやすい部位は、背骨(脊椎)、二の腕の骨(上腕骨)、太ももの骨(大腿骨)、骨盤(こつばん)です。「骨転移の好発部位とその症状」(下表参照)に部位による主な症状を示しましたので参照して下さい。

骨転移(こつてんい)の好発部位とその症状

転移場所 主な症状
① 首
(頸椎:けいつい
首や腕の痛み、手や足の麻痺(自由に手足を動かせない)、尿意や便意がわからなくなる
② 肩・腕(上腕骨) 肩や腕の痛み、体重をかけたり、腕を回したりする運動で骨折を起こす(腕が使えなくなる)
③ 肋骨 呼吸の度に刺激が加わるので、呼吸がしにくくなる
④ 背骨
(胸椎:きょうつい
(腰椎:ようつい
背中の痛み、脇腹の痛み、下半身麻痺(歩けなくなり、尿意や便意がわからなくなる)
⑤ 骨盤 痛み、起立困難、歩行困難
⑥ 足 体重をかけると骨折を起こす(歩行困難になる)

詳細は後で述べますが、骨転移の治療法には手術、放射線治療、薬物療法があります。また治療中あるいは治療後にリハビリテーションが行われる場合があり、それらを組み合わせれば、寝たきりなどにならず、生活の質の維持が可能になります。

骨転移による寝たきりを防ぎ、負担が少ない治療を受けるためには、早期に発見、早期に治療をすることが最も重要です。定期的に通院し何か症状があった場合には、我慢しないで早めに診察を受けるようにしましょう。

まだあります骨転移(こつてんい)の影響
~骨転移の全身への影響について~

骨転移の症状として、「痛み」や「骨折」はよく知られていますが、その他にも全身に影響を及ぼすことがあります。

  • 高カルシウム血症
    骨が破壊されると、骨のカルシウムが血液の中に放出され、血液内のカルシウム濃度が高くなります。その結果、便秘、吐き気、のどが渇く、食欲不振などの症状が出現します。
  • がんの活性化
    骨に蓄えられていた栄養をがんが吸収して、がんが活性化する可能性があります。
  • 寝たきりになってしまう可能性
    特に高齢者では、肺炎、膀胱炎や尿道炎、腎盂腎炎(尿路感染症)、認知症、関節が固くなるなどの合併症を併発しやすくなります。

早期に治療をして、生活の質を保ちましょう。