がんの脳への転移と
日常生活

脳転移(のうてんい)のメカニズム

では、がん細胞がどのようにして脳に転移するかについて説明します。
肺がん、乳がん、大腸がんなどが脳転移を起こしやすいがんの種類と説明しましたが、各臓器にできたがん細胞が増殖をしていく過程の中で、一部のがん細胞が血液の中に入って、血液の流れに乗ります。それが脳に到達して、増殖をしていくことで、脳に転移が起こります。このように、血液の流れに乗って転移するので、「血行性転移(けっこうせいてんい)」と言います。頭頸部がん(鼻や口、のどのがん)が大きくなって直接脳へ浸潤する場合もありますが、ほとんどの脳転移が「血行性転移」です。

血行性転移のイメージ図

また、血液は心臓から全身に運ばれます。がん細胞が脳に到達する場合も心臓を経由するので、他の臓器にも転移している可能性があります。脳転移が発見されたら、脳の他にもがん細胞が潜んでいないか、全身のチェックが必要になります。

髄膜癌腫症(ずいまくがんしゅしょう)(がん性髄膜炎(せいずいまくえん)または髄膜播種(ずいまくはしゅ))

特殊な転移として、髄膜癌腫症があります。これは、がん細胞が髄液の中に広がった状態を言います。脳の構造と働き(機能)で髄膜について、少し触れましたが、髄膜は外から硬膜、くも膜、軟膜の3層で構成されています。

脳を直接覆っているのは軟膜です。髄液は、くも膜と軟膜との間の空間(くも膜下腔)を流れています(下図参照)。

言い換えれば、髄膜癌腫症はがん細胞がくも膜下腔に侵入したことを意味します。

がん細胞のくも膜下腔への侵入経路としては、「血行性」あるいは「脳や硬膜から直接浸潤する」などと考えれています。

さまざまな症状がありますが、嘔気、ふらつき、後頭部から首筋の痛み、物が二重に見える(複視)症状が続くようでしたら、担当医に相談した方が良いでしょう。


髄膜の構造(イメージ図)