がんの脳への転移と
日常生活

がんの脳への転移について

内臓など脳以外の場所にできたがん細胞が、血液の流れにのって脳に到達し、そこで増殖することを「脳転移(のうてんい)」と言います。また、脳転移で発生したがんを「転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)」と言います。近年、転移性脳腫瘍の患者さんは増加傾向にあり、全がん患者さんの20~40%程度は脳転移が生じると言われています。この背景には、がん治療の進歩により、がんと共存しながら生活をする期間が延びていることなどが挙げられます。

転移が起こるとがんのステージ分類では、「ステージⅣ」で進行がんと診断されます。そのため、患者さんやご家族の中には、「すでに末期状態だ」、「もう長くはない」と考えられる方も少なくないでしょう。また、脳は生命維持の他、運動、感覚、知的活動など、人の体をコントロールしている大切な臓器ですので、脳にがんが発生すると、「どんな状態になってしまうのか」という大きな不安も感じられると思います。

確かに「脳転移」は、患者さんの生命に影響を及ぼすことや生活の質(Quality of life:QOL)を低下させる大きな要因になります。しかし、がん治療の進歩は「脳転移の治療」の進歩ももたらしていますので、あきらめるのではなく、よく医療者と話し合ってみましょう。

詳細は後で述べますが、脳転移の治療法には、手術、放射線治療、薬物療法などがあります。また治療中あるいは治療後にリハビリテーションが行われる場合があり、これらを組み合わせれば、治癒が難しくても、生活の質の維持が可能になる場合があります(治療法を参照)。

脳転移による生活の質の低下を防いだり、負担が少ない治療を受けたりするためには、早期に発見、早期に治療をすることが最も重要です。定期的な受診に加え、頭痛や吐いてしまう状態が続くなど、何か症状があった場合には、我慢しないで早めに診察を受けるようにしましょう。