がんの脳への転移と
日常生活

がんの脳転移と日常生活

治療の影響による症状とその対策

放射線治療

放射線の副作用は、放射線が当たった部位に生じます。全脳照射であれば、頭全体に(放射線治療を参照)、定位照射であれば、治療部位に影響が及びます。また、放射線の副作用には、照射中~照射後数週間に生じる「急性期の副作用」と照射後数カ月から数年で生じる「晩期の副作用」があります。

  特徴 主な症状
急性期の副作用 多くの人に生じる可能性がありますが、数週間で回復することが多いです
  • 食欲不振、だるい、頭が重い(放射線性宿酔症状)
  • 脳浮腫/けいれん発作
  • 脱毛
  • 皮膚炎
  • 中耳炎/外耳炎 など
晩期の副作用 生じる頻度は低いですが、生じると回復困難、あるいは回復に長時間有することが多いです
  • 物忘れ
  • 認知機能低下(注意力、判断力、理解力の低下、など)
  • ふらつき、歩行障害(高齢者)
  • 聴力低下(慢性中耳炎)
  • 放射線性変化(壊死) など

では、次に対策について簡単に述べていきます。なお、放射線性変化以外の晩期副作用に関しては、「脳転移の影響による症状・障害とその対策」をご参照ください。

■ 放射線性宿酔症状(ほうしゃせんせいしゅくすいしょうじょう)

からだがだるい、吐き気がする、食欲がない、頭痛・めまいがするなど車酔いのような症状が出現することがあります。状態に応じて、吐き気止めや副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬を使用します。日常生活では、以下のことも参考にしてください。

  • 疲れたら休みましょう
  • 食事は、1日3食にこだわらずに、気分が良い時に少量ずつ食べるようにしましょう。食直後は、体を起こしておきましょう
  • 行動する時には、時間に余裕をもつようにしましょう。また、公共交通機関を利用する場合は、できるだけ混雑時は避けましょう
  • 調子が悪い時には、無理をせず、家族や友人に必要なサポートを依頼しましょう

■ 脱毛

全脳照射では頭全体に脱毛が起こります。脱毛は、治療を開始してからおよそ2~3週間後に抜け始めます。そして、多くの場合、治療が終了してから3~6ヵ月経過すると毛はまた生えはじめ、6ヵ月~1年程度でほぼ回復します。なお、定位照射では、頭皮に当たった部位の脱毛が起こりますが、頭皮に当たる放射線の線量が少なければ、脱毛しない場合もあります。

  • 頭皮は清潔にしましょう。シャンプーは痛みなどの症状がなければ替える必要はありません。使用時は泡立てましょう
  • 爪をたてずにやさしく洗い、シャンプーが地肌に残らないようによく流しましょう
  • ウィッグや帽子などでカバーすることができます。使用する際は、蒸れなど頭皮の刺激に気をつけましょう

■ 皮膚炎

放射線が当たった範囲に赤みや腫れ、痛みなど、皮膚炎が生じます。頭皮だけでなく、放射線が当たっていれば、おでこや耳の皮膚にも生じます。皮膚炎が生じている時は、皮膚への刺激を少なくすることが必要です。なお、軟膏を使用する時は、自己判断せず担当医に相談しましょう。

  • 皮膚(頭皮)を清潔に保ちましょう。洗髪時の注意事項は、上記「脱毛」の項目をご参照ください
  • ウィッグを使用している場合は、外す時間を作りましょう
  • 帽子など直接皮膚に触れるものは、吸水性や通気性などに考慮して、刺激が少ない素材にしましょう
  • 外出時は帽子や日傘などで紫外線を避けましょう

■ 脳浮腫/けいれん発作

治療開始から1週間程度の期間、脳浮腫の増強により頭蓋内圧亢進症状やけいれん発作を起こす可能性があります。状態に応じて、浸透圧利尿薬や副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬、抗けいれん薬での治療を行います(症状緩和の治療を参照)。

■ 中耳炎/外耳炎

頻度は低いですが、耳に放射線が当たった場合に起こる可能性があります。症状により、専門医(耳鼻科)による診察や治療を行います。

刺激を避けるために耳かきによる頻回な耳掃除は行わないようにしましょう。

■ 放射線性変化(壊死:えし)

治療後半年以上経過してから生じる可能性があります。画像検査で発見されますが、症状が出現して診断されることもあります。症状は、放射線性変化の部位に一致した神経症状が出現します。

治療は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬の投与が行われますが、部位が広がった場合や摘出が可能であれば摘出手術をします。