抗がん剤治療と眼の症状

眼の症状のアイコン

主な眼の病気・症状
薬の影響で起こる眼の病気や症状を解説します

涙道障害(るいどうしょうがい)・流涙(りゅうるい

涙道障害は涙の通り道である「涙道」が狭くなったり、塞がったりすることを言います。
また、涙で眼の表面がにじんだり、涙がこぼれ落ちたりする症状(進行例)を「流涙」と言います。

(a)
涙嚢から鼻涙管にかけての内腔粘膜が腫れている写真

(a) 抗がん剤の影響で、涙嚢から鼻涙管にかけての内腔粘膜が腫れている。本来、涙道は円形であるが、変形している。

(b)
障害を受けた角膜の写真

(b) 抗がん剤による涙小管狭窄。

 

(a)(b) どちらも涙道内視鏡による所見。

正常な左下涙点
閉塞しかかっている
右下涙点
完全に閉塞した
左下涙点

《私たちの涙のながれ》

涙は涙腺で産生され、目の表面を通り、涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管を経て鼻に流れています。

涙のながれのイラスト

眼乾燥(ドライアイ)

涙の分泌量が減るなどにより、目の表面が乾燥する状態で角膜に傷がつくことがあります。眼が乾く感じや、ゴロゴロする、痛み、充血、流涙などの症状があります。

白内障

水晶体は、外からの光を屈折させて、網膜に像を結んだり、ピントを合わせたりするなどの役割をして、本来は透明な臓器です。この水晶体が濁り、光が通りにくくなる状態が「白内障」です。視力低下や目のかすみ、まぶしく感じたりする症状があります。

涙のながれのイラスト

球後視神経炎(きゅうごししんけいえん

視神経はその発生部位により分類されます。球後視神経炎は、眼球より後ろの視神経の炎症で、視力低下や視野障害などを起こします。

ぶどう膜炎・黄斑浮腫(おうはんふしゅ

ぶどう膜は虹彩(こうさい)、毛様体(もうようたい)、脈絡膜(みゃくらくまく)の3つの部分から構成されている組織です(下図参照)。色素と血管に富んでいるので、眼内に栄養と酸素を供給したり、瞳孔以外から光が眼内に入ったりするのを防ぐ働きをしています。「ぶどう膜炎」とは、このぶどう膜の一部もしくは全体に炎症が生じた状態のことです。症状は、羞明(しゅうめいかすみ目視力低下、眼の痛み、飛蚊症(ひぶんしょうなどです。

黄斑は網膜の中心部分です。重要な視細胞が集中していて、形や大きさ、色などを識別する役割があります。 「黄斑浮腫」は黄斑部の網膜内に水が溜まり腫れた状態を言います。症状は視力低下かすみ目小視症などです。

眼の組織のイラスト
分子標的薬による黄斑部漿液性剥離
涙嚢から鼻涙管にかけての内腔粘膜が腫れている写真
分子標的薬中止により改善
障害を受けた角膜の写真

加齢性黄斑症、中心性網膜症とステロイド薬

抗がん剤治療前に、加齢性黄斑症や中心性網膜症のある方は、担当医にお伝えください。抗がん剤以外でも、抗がん剤治療計画にあるステロイド(副腎皮質ホルモン)薬の使用で、眼の症状の病状が悪化することがあります。

結膜炎(けつまくえん)・角膜障害(かくまくしょうがい

結膜と角膜は下図で示した所です。

結膜と角膜のイラスト

「結膜炎」「角膜障害」とは、それぞれの所で障害が起きた状態を言います。

≪正常な角膜と角膜障害の状態≫

<正常な角膜>
正常な角膜の写真
<障害を受けた角膜>
障害を受けた角膜の写真

(*)角膜上皮障害(上方に特に強い障害が認められる)

「結膜炎」の症状は、眼が赤くなったり、目ヤニが出たり、流涙、異物感などです。「角膜障害」は、眼の痛み、異物感、視力低下などが起こりますが、病態(角膜の障害度)で異なります。

角膜と点眼薬

抗がん剤の副作用で起こる角膜障害に対しては、ヒアルロン酸の点眼薬の使用は勧められません。ヒアルロン酸は、その粘稠性により、抗がん剤含有の涙液をうっ滞させ、さらに障害を悪化させる可能性があります。

また、防腐剤は角膜の傷を悪化させるので、涙道障害の予防の点眼薬には勧められません。ただし、点眼をしていれば、涙道障害を完全に予防できるわけではありませんので、点眼を使用していて何か異常があれば、早めに担当医に相談しましょう。

角膜びらん、角膜潰瘍

「角膜びらん」は角膜の一番上の表面がただれる状態を言います。「角膜潰瘍」は角膜に感染が起きて角膜の真ん中が細菌により侵食される状態を言います。目の痛み、充血、まぶしさ、視力低下などの症状がみられます。

飛蚊症(ひぶんしょう

小さな糸くずや蚊のようなもの、あるいはフワフワと浮遊物が飛んでいるように見える現象で、眼を動かすと一緒に動く特徴があります。

硝子体に何らかの原因で濁りが生じて起こります。

眼の組織のイラスト

網膜静脈閉塞(もうまくじょうみゃくへいそく

網膜静脈は網膜に分布する血管です。この静脈が何らかの原因で閉塞した状態を「網膜静脈閉塞」と言い、網膜が出血を起こします。症状は、視力低下や視野障害、変視症などです。

網膜(もうまく)とは?

網膜は眼の内側の壁を覆う薄い膜で、その働きはカメラで例えますと、フィルムに相当するところです。

眼の組織のイラスト

視力低下

物がみえにくくなる症状です。

羞明(しゅうめい

「まぶしい」ことを羞明と呼びます。ここでは、異常にまぶしく感じる状態のことを言います。

変視症(へんししょう

物が歪んで見える症状です。

小視症(しょうししょう

物が小さく見える症状です。

複視(ふくし

物が二重に見える症状です。

かすみ目(霧視(むし))

かすみがかかったように見える症状です。

光視症(こうししょう

暗い所で眼を閉じているのに、眼の端(多くは耳側)の方に光が走るのを感じる症状です。

睫毛乱生(しょうもうらんせい)・
睫毛の長生化(しょうもうのちょうせいか

「睫毛」とは「まつ毛」のことです。

睫毛乱生とは、基本的に正しい位置に生えるまつ毛が、本来の向きに生えず、不揃いな状態のことを言います。

睫毛の長生化は、まつ毛が異常に長くなる状態を言います。まつ毛が正常に生えずカールすることで、角膜炎になることもあります(下図参照)。

睫毛乱生のイラスト

眼瞼炎(がんけんえん

「眼瞼」とはまぶたのことです。眼瞼炎はまぶたに生じる炎症を言います。

点眼薬の上手なさし方

医療者から説明された点眼方法(時間、量、両眼か片眼か、など)を守って下さい。 点眼薬の容器の先端を顔の皮膚やまつ毛につけないように注意しましょう。

  1. 手を石鹸と流水で丁寧に洗います。
  2. 上を向いて、下まぶたを引きます。
  3. 引いた下まぶたに、指示されている量をさします(多くの場合は1 滴です)。
  4. 点眼後はまばたきをしないで、まぶたを閉じ、1 分間ほど目頭を軽く押さえます。
  5. あふれた液は「目の周り専用清浄綿」か、布繊維がでない清潔なハンカチ(ガーゼなどは避けましょう)でやさしく拭きとります。