抗がん剤・放射線治療と食事のくふう

症状と対策

味覚の変化の解説

味を感じにくくなったり、逆に過敏になる、あるいは金属や薬品など、異物の味を感じるなど、抗がん剤や放射線治療によって、味の感じ方が変わることがあります。そのために食欲が減退することも少なくありません。味覚がどう変化したのかは本人にしかわかりません。より効果的な対策を立てるには、まず症状を言葉でいい表わしてみて、家族や周囲の人に伝えることから始めましょう。実際の症状は複雑でなかなか表現するのは難しいと思いますが、やり取りをくり返し、いろいろ試しながら食べられるものを見つけていきましょう。

  • 味覚の変化で悩む患者さんの声

    食べ物の味がわからなくなり、食欲が落ちてしまった。

    食事の味が少しわからない。
    食物の好みが変わった。

    抗がん剤の副作用は少なかったが、食物の味がしなかったのでつらかった。

    抗がん剤の副作用で、味覚異常で食事を作るのに困った。

    食事の味がわからない。

    放射線治療後、前のように味覚が戻らない。

    味覚の衰えで食欲はない。ただ苦いだけの食感がする、無理やり食べている。

    このほか、舌に膜が張ったような感覚を覚えることもあります。また、金属味や薬品味、苦味を強く感じたり、なにを食べても甘く感じるという症状を訴える人も少なくありません。

  • 医師から「原因はさまざまです」

    一つは抗がん剤による味覚神経の障害です

    舌の表面には味を感じる「味蕾」があり、味蕾は味細胞が集まってできています。抗がん剤が味蕾の新陳代謝を阻害したり、味細胞から脳の中枢神経に情報を伝える舌神経や舌咽神経などに障害を与え、そのために味覚の変化が起こりやすいと考えられています。抗がん剤治療を受けた人の3割前後が、なんらかの変化を感じたという報告もあります。

    高齢者に起こりやすい傾向があります

    味蕾を構成する味細胞は加齢とともに数が減り、味覚を感じる神経の機能も年齢とともに低下します。また、唾液の分泌も減って口の中が渇きやすくなるなど、加齢による変化も加わるため、高齢者は味覚障害が起こりやすいといえます。

    放射線治療による粘膜炎も味覚の変化を起こします

    放射線療法を舌や咽頭や喉頭に受けると、苦味や不快な味を感じたり、まったく味を感じなかったりすることがあります。これは舌の粘膜と味蕾が放射線によって変化するためです。なお、食べ物の味には、嗅覚も影響するので、嗅覚の変化があることもあります。

    亜鉛の不足にも注意しましょう

    味覚の変化に関係している栄養素に亜鉛があります。亜鉛はミネラルの一つで、細胞の形成や新陳代謝を促します。味細胞は新陳代謝が活発なので、亜鉛が不足していると再生が滞り、味覚障害の原因になるともいわれています。また、抗がん剤の中には亜鉛の吸収を低下させるものがあるので、亜鉛不足にならないよう注意する必要があります。

    亜鉛を含む食材リスト

    主食では

    玄米、アマランサス、そば

    主菜では

    かき、ほたて貝、うなぎ、かに、数の子、牛赤身肉、豚赤身肉、レバー、卵黄

    副菜では

    そら豆、とうもろこし、竹の子

    嗜好品では

    チーズ、ココア、抹茶、カシューナッツ

  • 看護師から「口の中のケアが効果的です」

    うがいやあめで口の中の乾燥を防ぎましょう

    唾液は口の中を湿らせて、かんだり飲み込んだりする機能をスムーズにしてくれます。殺菌作用を持つさまざまな物質も含まれ、口の中を清潔に保っています。食べ物の味物質をとかして味蕾が感知する働きを助ける作用もあります。口が渇いたら、うがいをしたり、あめをなめて唾液の分泌を促しましょう。

    歯みがきも効果的です

    口の中が汚れていると、味が変わってきます。歯みがきやうがいをして歯の汚れがとれて口の中がさっぱりすると、味の感じ方が変わることもあります。口の中を傷つけないよう、やわらかいブラシでブラッシングしましょう。歯みがき剤も刺激の少ないものを選ぶとよいでしょう。

  • 栄養士から「症状に合わせて味を調整しましょう」

    「味がない」「味がうすい」には味をはっきりさせるくふうを

    抗がん剤治療によって、一時的に塩分に鈍感になる時期があります。腎機能や血圧などに問題がなければ、一時的に塩味を強くするのも一つの方法です。カップめんや甘辛味のつくだ煮などで食が進むことがあります。
    しかし、いつもすべて料理の味を濃くしたのでは、口やのどの粘膜を傷めたり、血圧や血糖値の上昇も心配です。塩味や甘味に頼らずに味をはっきりさせるポイントも知っておきましょう。

    うまみやこくをきかせる

    だしを濃いめにとる、合わせだしにする、洋風料理ならバターや乳製品、和風料理にはみりんや酒でこくを出すとよいでしょう。

    酸味をきかせる

    酸味は塩味の代役を果たせるほど、食材の味を引き立てる効果があります。特に肉や魚に効果的です。口内炎などで酸味がしみる場合は、酸味がおだやかなかんきつ類の搾り汁を使うとよいでしょう。

    食材の持ち味を生かす

    旬の新鮮な魚や野菜は、うまみも香りも強く、味覚にも嗅覚にも鮮明なメッセージを伝えてくれます。煮物や汁物などは、食材の種類を増やすとうまみと香りの相乗効果が得られます。

    さましてから食べる

    塩味や甘味、うまみなどの味は、熱すぎても冷たすぎても感じにくいものです。煮物や汁物などは人肌近くにさましてから食べると、味がくっきりしておいしく感じることがあります。

    味にアクセントをつける

    からし、カレー、しょうが、梅など、少量でアクセントになる香辛料や調味料を加えると、食材の持ち味がはっきりします。ただし、こうした強い味は、症状によっては不快に感じることもあるので、注意して使いましょう。

    「塩やしょうゆが苦い」には酸味、香り、うまみの出番

    塩やしょうゆを苦く感じたり、薬品や金属のような味に感じる場合は、塩味を控えめにして、上の図に紹介した「味をはっきりさせる」5つのポイントで対処しましょう。だしを利かせるのに、その濃さの調整が難しかったり、種類によってはにおいが気になる場合もあります。粉末化させただしを活用し、量や種類を変えてみるのも一つの方法です。また、食前にレモンやオレンジジュースなどを飲んでおくと味覚が刺激されて症状がやわらぐことがあります。

    いつもと違う「まずい」食品は控えるのがいちばん

    肉やハム・ソーセージなどに苦味や金属味を感じたり、トマトや化学調味料に薬品の味を感じるなど、特定の食品に不快な味を感じることがあります。いずれも一時的なことなので、そうした食品はしばらく控え、肉の代わりに魚や豆腐、トマトはかぼちゃに、化学調味料はかつおやこんぶなどの天然だしに、など栄養価も考えて代役を立てましょう。

    甘味を強く感じる場合は酸味でアクセントを

    甘味を強く感じて、食べ物や料理がどれも甘く感じるような場合があります。その場合は、砂糖やみりん、トマトケチャップなどの甘味調味料は控え、塩味を濃いめにします。酸味でアクセントをつけるのも効果的です。にんじんやかぼちゃ、玉ねぎ、さつま芋など、甘味の強い食材も控えたほうが無難です。

    食べ物を苦く感じるときはこれ

    なにを食べても苦味を感じてしまうときは、汁物がおすすめです。食べ物が汁に包まれて舌の上をなめらかに、比較的早く通過するので、苦味をあまり感じなくてすみます。だしやスープのうまみや風味が、苦味をおさえてくれるという声もあります。
    口の中に苦味が残ってしまったときは、甘ずっぱいキャンディー、キャラメルをなめるとやわらぐことがあります。

    亜鉛を含む食材リスト

    主食では

    玄米、アマランサス、そば

    主菜では

    かき、ほたて貝、うなぎ、かに、数の子、牛赤身肉、豚赤身肉、レバー、卵黄

    副菜では

    そら豆、とうもろこし、竹の子

    嗜好品では

    チーズ、ココア、抹茶、カシューナッツ

    食欲不振や味覚障害などから、食事が充分にとれないと、亜鉛が不足する心配があります。味覚障害を亜鉛で改善できるという科学的な根拠はまだ定かではありませんが、亜鉛が不足しないように注意する必要はあります。
    亜鉛を豊富に含む食品は、赤身肉やレバー、かきなど。植物性食品も、穀物や豆類、ナッツなどをこまめにとれば充分補給できます。