がん放射線治療の
概要

放射線治療の副作用(有害事象)と対策

放射線治療の副作用(有害事象)対策について

照射した部位で出現する症状とその対策

③頭頸部(口、のど、など) 

照射方法:体外照射

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口やのどの粘膜や唾液腺などが影響を受けます。粘膜が影響を受けると粘膜に炎症が起こり、痛みや炎症が起こった部位の機能が低下します。
唾液腺が影響を受けると唾液の分泌量が減ります。
また、耳に当たると耳にも炎症が起こるので、聞こえが悪くなることがあります。

口、のどの粘膜炎(口腔粘膜炎・咽頭炎・喉頭炎)/口腔乾燥

口、のどの粘膜炎や口腔乾燥は、放射線治療の開始後2~3週間目ごろから症状が出現します。粘膜炎は、放射線が当たった範囲で口の中やのどの粘膜が赤くなり、痛みや食べ物、飲み物が飲み込みにくくなったり、声がかすれたりする症状が出現します。症状が強い場合は粘膜保護剤や鎮痛剤などを使用しますが、治療が終了すれば、これらの症状は徐々によくなります。
口腔乾燥の症状は、口が渇く、むし歯や歯周病ができやすくなる、話しづらい、食事が食べにくい、味覚障害などさまざまです。また、むし歯や歯周病は、口腔内感染のリスクを高めます。口腔乾燥は、治療が終了しても回復には時間がかかったり、完全に回復しなかったりする場合があります。
粘膜炎や口腔乾燥では、食事の工夫と口腔ケアが大切になります。

《食事の工夫》

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「食べやすいようにする」ことがポイントです。

  • やわらかく煮込んだり、とろみをつけたり、裏ごしをしたり、食べ物にひと工夫すると食べやすくなります。
  • 塩分が濃いものや酸味が強いもの、香辛料など刺激性のものは避けましょう。
  • 熱いものは刺激になりますので、人肌程度に冷ましてから食べましょう。
  • 味付けでしみる場合は、薄味にしてみましょう。
  • 食事があまりとれない時は、流動食にしたり、栄養補助食品やゼリー飲料などの市販品を利用したりしてもよいでしょう。
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  • 口の乾燥がある時は、水分をこまめに補給しましょう。
  • 味覚障害に対しては、だしを利かせたり、ゴマやゆずなどの香りや酢を利用したりして、味を感じやすくする工夫が効果的な場合があります。

〔口腔ケア〕

口腔ケアの基本は、「観察」、「清潔に保つ」、「潤す」、「痛みをコントロールする」です。

《口の中の観察》

粘膜炎により口の中に痛みがある時も、歯みがきはできる範囲で丁寧に行い、うがいをこまめにしましょう。

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《口の中を清潔に保つ》

粘膜炎により口の中に痛みがある時も、歯みがきはできる範囲で丁寧に行い、うがいをこまめにしましょう。

  • 歯ブラシはブラシの部分(ヘッド)が小さく、毛先が平らにカットされたものを選び、左右に細かく動かしながら磨きます。この時、力を入れすぎないようにします。
  • 歯みがき剤や洗口液などの口腔ケア用品は、研磨剤、発泡剤、アルコール成分など刺激になるようなものが入っていないものを使用しましょう(口腔ケア用品についてを参照)。
  • うがいはしみることがなければ、水道水でよいでしょう。しみる場合は医療者に相談してください。
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  • うがいは1日3回以上、できれば8~10回くらい行うとよりよいでしょう。なお、喉を洗うガラガラうがいは行なわずにブクブクうがいにしましょう。

《口腔内を潤す》

  • 口腔乾燥がある場合は、歯みがきを行う前に水を口に含み、口の中を湿らせましょう。このことによって乾燥でこびりついた汚れが取れやすくなります。歯みがき後は保湿剤を使用して乾燥を予防しましょう。

《痛みをコントロールする》

  • 痛みは症状に応じた鎮痛剤を使用します。医療者に相談しましょう。
  • 痛みで食事が摂りにくい時は、食事の30~60分前に痛み止めを服用するとよいでしょう。

《口腔粘膜炎が重度の時の口腔ケア》

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  • 歯ブラシが粘膜炎のある部位に当たらないように、慎重に動かしましょう。
  • 歯ブラシはブラシの部分がやわらかいものを使用しましょう。
  • 歯みがき前に痛み止め成分が入った軟膏を唇に塗ると歯みがきがしやすくなる場合もあります。痛み止めの軟膏については医療者に相談してください。
  • 歯みがきができない時期はうがいのみでもかまいません。
  • 粘膜炎のある部位にスポンジブラシは使用しないでください。