抗がん剤治療と末梢神経障害

末梢神経障害の原因
未だ、明らかになっていない点もあります

神経細胞体障害

神経細胞体が直接抗がん剤の影響を受けることにより障害が生じます。細胞体が障害されると軸索(じくさく)や髄鞘(ずいしょう)が二次的にダメージを受けます(図5)。特に末梢神経系の中でも、「後根神経節(こうこんしんけいせつ)」(図6)と呼ばれる所が障害を受けやすいとされています。「後根神経節」は感覚神経細胞の集まりなので、神経細胞体障害では、主に感覚障害を生じます。この場合は、軸索が長い・短いには関係なく、顔面や体などの軸索が短い神経もダメージを受けます。

では何故、「後根神経節」が影響を受けやすいのか、もう少し詳しく説明します。動脈と静脈を結ぶ毛細血管は、全身に酸素や栄養を供給し、老廃物を回収するため、水や電解質、栄養素、薬剤などの多くの物質を通過させます。しかしながら、中枢神経系である脳と脊髄の毛細血管の血管壁には、神経に害となる物質を避けるため、通過できる物質を制限する特別なしくみがあります。しかし、(図6) に示したように、この「後根神経節」は脊髄の外にあり、抗がん剤も容易に取り込んでしまいその影響を受けやすいのです。

(図5)神経細胞体がダメージを受け、二次的に軸索や髄鞘も障害を受ける(イメージ図)
(図6)脊髄の横断面のイメージ図