抗がん剤治療と口腔粘膜炎
・口腔乾燥

がん薬物療法と口腔内トラブル
口腔粘膜炎・口腔乾燥を中心に

がん薬物療法でおこる副作用の中で、口腔粘膜炎や口腔乾燥といった口腔内トラブルは40~70%と比較的起こりやすい副作用です。
口腔粘膜炎は、口の中の痛みや出血、熱いものや冷たいものがしみるなどの症状があります。これは、抗がん剤により唇やほほ、舌などの、口の中の粘膜がダメージを受けて、炎症が起こるために発症します。個人差はありますが、一般的には治療開始後7日前後で症状が現れ、10日~12日目でピークになります。
口腔乾燥は、「口が渇く」、「口の中がネバネバする」といった症状で、薬の影響で唾液(だえき)の分泌量が減ることで起こります。口腔乾燥の状態は、不快感だけではなく、話しづらい、食事が食べにくい、味覚が変化するなど、いろいろな影響があります。

これらの症状は、抗がん剤の治療が終わるとほとんど治ってしまうため、「一時的な症状」であることが多いです。そのために「口の症状」は、軽視されがちですが、強い痛みや食事がしにくい、美味しくない、話がしづらいなどの症状は患者さんの日常生活の質に大きな影響をおよぼします。また、免疫力が低下しやすい抗がん剤治療中では、炎症による口の中の傷口から細菌が入り、全身感染症になる場合もあります。このような状態にまで悪化すると、抗がん剤治療が継続できず、休止や中止になってしまう場合もあり得ます。

現在のところ、抗がん剤による口腔内トラブルを完全に防ぐ方法は確立されていません。しかし、あらかじめ準備をしたり、早めに対処したりすることで、症状をうまくコントロールすることが可能です。口の中は自身でも観察しやすく、早期に変化に気付くことができ、自分で症状を和らげるように対処をすることが可能です。それには、患者さん自身が対処法を理解し、実践していくことが必要になります。医療者と相談しながら、その時どきで必要なケアを行っていきましょう。